エンジンは人類史上、最もすぐれた発明と言っても過言では有りません。様々な賢人が知恵を振り絞って発明・改良した結果、出来上がった産物であり、いわば叡智の結晶と言えます。
このページでは、そのエンジンの仕組みについて出来るだけ分かり易く解説していきます。
さいしょに
エンジンの歴史(めちゃ簡単に)
セイヴァリ(1698年)「蒸気機関作るで!」→蒸気機関を用いたポンプで水汲みが捗るようになる(けど事故起こりまくりで効率もあんま良くない)
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ニューコメン(1712年)「セイヴァリの真似して改良した蒸気機関を作ったった。これでもっと水汲み楽勝になるで!」→水汲みが楽勝になる(熱効率は1%で依然最悪なものの安全)
↓
ワット(1769年)「ニューコメンのヤツを大改良したらめっちゃ効率良くなった!やったぜ」(「復水器」を発明する事でシリンダー内を高温に保つ事に成功)→俗に言う「産業革命時代」突入
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トレビシック(1804年)「ワットのヤツを高圧蒸気に変えたらめっちゃ小型化できたった!やったぜ」→機関車とか船が開発される
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オットー(1862年)「そもそもシリンダー内で爆発させたらもっと効率ええやろ」→内燃機関の発明→オットーサイクル(4ストロークエンジン)の開発→車・バイクへの応用
↓
今現在に至る
我々の義務
上記がエンジン開発に携わった主な人物ですが、上記以外にも数え切れないほど沢山の人物が開発に寄与しています。
我々が普段、当たり前のように使用しているバイクや車のエンジンは、彼らの成果があってこそであり、また、今現在私達が高度な文明を築けているのもエンジン(蒸気機関含め)の恩恵があってこそです。
そのエンジンの仕組みを知る事は、いわば人類の義務と言っても過言ではないかもしれません。
前置きが長くなりましたが、次項目からエンジンの仕組みについて説明します。(出来るだけ簡単に、難しい部分は省いて説明したつもりです)
エンジンの仕組み
まず、↓のgif動画を見てください。これが一番メジャーな「4ストロークエンジン」と呼ばれるものです。これを例に、バイク(車)を動かしている仕組みについて説明したいと思います。※燃料は「ガソリン」を使っているものとして説明します。「軽油」(ディーゼルエンジン)との違いはコチラ
エンジンの工程
エンジンの仕組みは一言で言うと「空気と燃料(ガソリン)を混ぜて爆発させ、その爆発の勢いでタイヤに動力を伝える」といえます。(はしょって言うと)
この「爆発」を起こすために、4ストロークエンジンでは4つの工程を延々と繰り返しています。
↑のgif動画を例に爆発までの工程を順番に書くと、
- 吸入(吸気バルブを開き、空気をシリンダー内に吸い込み、同時に燃料も噴射して、燃料と空気の混合気を作ります)
- 圧縮(吸気バルブを閉じ、慣性で動いているピストンによって、シリンダー内の混合気を圧縮する)
- 燃焼・膨張(点火プラグにて混合気を着火し、爆発させ、シリンダーを勢い良く押す)
- 排気(排気バルブを開き、爆発後の排ガスを逃がす)
※部品名について分からなければ次項目を参照して下さい。
※この工程は「ガソリンエンジン」を想定しています。「ディーゼルエンジン」の場合は少し工程が変わってきます。詳細はこの項目。
↑のgifを見てもらったら分かると思いますが、基本的にエンジン内で行われているのはコレだけです。
各部品の名称と役割
gif動画の画像を例に、主な部品の名称と役割を説明します。
シリンダー
ピストンを収容するための円筒の部品。
この中でガソリンと空気を混ぜた物を爆発させてピストンに動力を伝えます。この爆発させる為の空間の事を「燃焼室」と呼びます。
ちなみに、このシリンダーの内径を拡げる事で排気量を上げる所為の事を「ボアアップ」と言います。
ピストン
爆発を受け、ひたすらピストン運動を繰り返す為の部品。
ピストン運動する際にシリンダとの隙間は限りなく少なくする必要が有る為、ピストンの回りにはピストンリングという軸受がはめられています。これが劣化する事で、爆発した際に隙間から燃焼ガスが出て行く事を「ガス抜け」と言います。「ボアアップ」した際などはこの部品は要注意です。
コンロッド(コネクティングロッド)
ピストンの「直進運動」を「回転運動」に変換するための部品。1分間に何千回と回転する為、軽量・剛性・熱耐性が求められる部品です。
ラチェットレンチみたいな形をしていますが、コンロッドは基本的にどのエンジンでのこの形です。
クランクシャフト
クランクシャフト(赤色)
出典:クランクシャフト – Wikipedia
コンロッドによって変換されたエネルギーを元に高速回転する部品。基本的に1エンジンに付き1つだけです。この部品からいろいろなパーツを経由してタイヤに動力を伝えます。
俗に言う「エンジンの回転数」と言えば、この部品の回転数の事を指します。
あとこの部品には連続的に回転させる為の「重り」的な役割も有り、これが無いと規則正しく回転しません。(「軽すぎる物」を高速で回しまくっても「慣性」で回り続けてくれないですよね?そういう感じの意味です)
吸排気バルブ
吸気・排気のタイミングで開閉するバルブ。
これの動く仕組みは、「カムチェーン」というチェーンがクランクシャフトに繋がっており、爆発のサイクルの合わせて丁度良いタイミングで吸排気バルブが開閉する様に調整されているのです。
詳しく知りたい場合は下記ページ等を参考にしてみて下さい。分かり易く解説されてます。
http://4-mini.net/column1_1-1-3-2.php
バイクや車で置き換えると
photo by:David Saddler
バイクや車のタコメータ(↑の様な表示の部分)に、エンジンの回転数がrpm(1分間に何回転してるかって意味)という単位で表示されていると思いますが、これは具体的に言うと「クランクシャフトが何回転してるか」という意味です。
冒頭のgif動画(4ストローク)では、4工程で2回転してる事が分かると思います。
つまりタコメータ部分が、例えば「6000rpm」の時には、エンジン内では1分間に上記の4工程を3000回行っている事になります。1秒当たりに直すと50回にもなります。
「1秒間に50回!?んなアホな(笑)」と思われるかもしれませんが、実際にはそれくらいめちゃくちゃ高速で動いています。(ちなみにパソコンのハードディスクは5400rpm(90回転/秒)です)
エンジンの種類
今まで説明してきた、ピストンからの「直進運動」を「回転運動」に変えて動力を得るタイプのエンジンを「レシプロエンジン」と言います。一般的なバイク・車は全てこのタイプです。
レシプロエンジン以外に、「ロータリーエンジン」、「ハイブリッドエンジン」などが有ります。ここでは簡単に1行程度で説明します。
詳しいエンジンの種類についての説明は以下ページを参照して下さい。
→エンジンの種類について
ロータリーエンジン
爆発をそのまんま「回転運動」にして動力を伝えるタイプのエンジン。中で回る「ローター」という部品が肝になっています。
ハイブリッドエンジン
photo by Toyota UK
ガソリンでも電気でも両方で走る事が出来るスゴイエンジン。本体価格さえ安ければ言う事無しの最強エンジン。
気筒数の違いについて
photo by:What’s The Best “How Cars Work” Animated GIF?
気筒数とは、「シリンダーの数」の事です。種類としては、単気筒(シリンダーが1個)・2気筒・3気筒(珍しい)・4気筒が有ります。
シリンダーの数が増えるという事は、シリンダが増えた数だけ、ピストン・コンロッド・吸排気バルブ・点火プラグ等の部品も増えるという事です。(コストが上がる)
一般的には、気筒数を増やす事で以下の様な傾向になります。
- 最高速度が上がる(高回転まで回せる)
- 低速での加速が弱くなる
- 1気筒当たりの騒音が小さくなる(けどその分気筒数が増えてるのでウルサイことにはウルサイ)
- メンテしづらくなる(仕組みがややこしくなるので)
- バイクの値段が高くなる(部品が多くなるので)
- 燃費が悪くなる
※あくまで「一般的には」です。「ストローク数」や「構造の違い」によっても変わってきます。
詳しい違いについては以下ページを参照して下さい。
構造の違いについて
エンジンは、「シリンダーの位置」によってエンジンの呼び名が変わります。
シリンダーの位置を変える事で、「エンジンの重心・振動の大小・メンテのし易さ・燃費の良し悪し・エンジン自体の大きさ」等が変わってきます。
シリンダー位置の違いによる呼び名例
- 直列型エンジン
- 直列2気筒、直列3気筒、直列4気筒…etc
- V型エンジン
- V型2気筒、V型3気筒、V型4気筒…etc
- 水平対向エンジン
詳しいエンジンの構造の違いについては以下ページを参照して下さい。
燃料による違い
photo by:Theen Moy
上記(エンジンの仕組み)では、「ガソリンエンジン」での工程を書きましたが、「ディーゼルエンジン」(燃料が軽油)では少し工程に違いが有ります。
主な違いとしては、「ガソリンエンジン」では吸入の際にガソリンと空気を混ぜた状態で圧縮するのに対し、「ディーゼルエンジン」では空気のみを圧縮した後で軽油を噴射します。
- 吸入(吸気バルブを開き、空気をシリンダー内に吸い込みます)
- 圧縮(吸気バルブを閉じ、慣性で動いているピストンによって、シリンダー内の空気を圧縮する)
- 燃焼・膨張(圧縮された空気に軽油を噴射し、爆発させ、シリンダーを勢い良く押す)
- 排気(排気バルブを開き、爆発後の排ガスを逃がす)
空気は圧縮すると500℃近くまで上昇します。
上昇した空気に燃料を噴射して、爆発を起こさせるのがディーゼルエンジンの仕組みですが、ガソリンは発火点が高い為、ディーゼルエンジンの燃料としては不向きなのです。(※発火点:自然に燃え始めちゃう温度)
ガソリンは約300~500℃に対して、軽油は約250~300℃です。
ガソリンは第一石油類で、軽油は第二石油類ですが、発火点は軽油の方が低いという特徴が有ります。(引火点は当然ガソリンのが低い)
「ガソリンエンジン」に対しての「ディーゼルエンジン」の特徴
- 排気ガスが汚い(NOxガス・PMとか出る)
- 燃費が良い
- トルクが出やすい→軽トラとか運搬車に向いてる
- 高速になるほど燃費が悪くなる
- ディーゼルエンジン自体が高価
「ディーゼルは環境に悪い」というイメージで世間から卑下されていましたが、近年は開発が進んでおり、クリーンなディーゼルに注目が集まっています。
http://response.jp/article/2015/03/31/247952.html
クリーンディーゼル専用車マツダCX-3が一か月で一万台以上を受注! – 夕刊アメーバニュース
http://yukan-news.ameba.jp/20150330-23/
更に詳しい違いについては下記ページ参照下さい。
→ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの違い
さいごに
バイク・車に乗る以上、どういう原理で動いてるのかくらいは知っておいて損は無いです。
原理を知ることでメンテナンスの重要性や、運転面でのエンジンに対する配慮等がわかると思いますので、本当の意味で優良ドライバーになれるのでは無いでしょうか。